攻撃は最大の防御:メチレーションで終末期からの逆転を狙う(その5)

シリーズ記事として続けて執筆の予定で進めていたのに日常にかまけて前回の投稿からあっという間に11カ月が経過してしまいました。

その期間、攻めの姿勢を崩さずメチレーションのフルサポートを投入するとともに可能な限りフィジカルトレーニングに明け暮れています。

ICUから生還してもうすぐ2年、現在までの奮闘と成果をレポートします。

シリーズ記事

メチレーションで終末期からの逆転を狙う(その1)

胃瘻は戦闘ツール:メチレーションで終末期からの逆転を狙う(その2)

ああ、代謝の個性を無視しないで!:メチレーションで終末期からの逆転を狙う(その3)

驚愕!デトックス能は復活&絶好調:メチレーションで終末期からの逆転を狙う(その4)


やってみなければはじまらない

2カ月間の入院生活から帰宅した主人はそれ以前とはまるで別人になっていました。
やせ細った手足をきつく縮めて横たわるだけの体温のある塊となって、口をぽかんと開けて目はうつろ、うとうとと眠りときおり絞り出すように大きな声を上げる。吸引で呼吸を確保して胃瘻からの栄養でいのちをつないでいる。

コロナ恐るべし!
いや、入院という環境のせいなのか!?
まず生きていることを思い出してもらわなければ。
そのために強硬に退院してきたのだから。

帰宅当日から勝算は全くありませんでしたが危険を伴う常識ではありえないリハビリを開始しました。
「できない」を「できる」に変えるためには現状にくるまれてしまうわけにはいかないのです。

拘縮との闘い

あわよくば元のように
せめて入院前のレベルまでの運動能力を取り戻して欲しいと願っているわけですから、不可逆的な変形や変質は絶対に避けたいわけです。ここでしくじったらどんなにリハビリを積んでも使えるようにならないと思い、かなり無謀なことをやりました。呼吸もままならず胸郭マッサージで肺のリハビリからやらなければならない状態なのですが、カニューレで酸素を流しながら。

関節拘縮とは何か
30日以内の固定→正常に回復
40日以上の固定→回復が遅延
60日以上の固定→回復の期待薄い

予防するには1日2回それぞれ10回程度の全可動域にわたる運動

うーん、こういうことははじめに知っておきたかった。
実は今初めてチェックをしています(笑)

看護師さん、PTさん、鍼灸マッサージ師さんetc.
お話を聞きながら、実際に動かしながら、主人の変化を見ながら理解していったYOROZU流の2年間でしたが、入院などの急激な変化はなくても活動の低下に伴って拘縮のリスクは上がっていくので、アルツハイマー病諸氏に置かれましてはまだまだ活動できる早い段階から理解しておいてよいかもしれません。

実践と2年間での変化
60日以上の入院生活でほぼ上を向いて寝たままだったので帰宅時の様子は仕方のないことですが、丁寧に全身をチェックしていくと自力で動かすことはないけれど右の肘関節と左の足首、左の股関節以外は何とか動く状態。体位を変えて重力をかけるとかすかな筋肉のツッパリ、無理やりに動かすと抵抗する筋収縮が見られました。

なんや~うごくやんか~

PT氏(介護保険 週1回 40分の施術)
リラックスとストレッチで固まるのを予防する方針
緊張で筋収縮している時間が長いと筋短縮が進行して拘縮するのでリラックスを心がけてゆったりしてください。無理に姿勢を変えると(座らせたり、立たせたり、歩かせようとしたり)転倒につながりますから...また入院になると大変ですし、安全に、安楽に。

マッサージ師さん(自費 週3回 1時間の施術)
運動を引き出し脳を刺激して筋肉と骨を動かしていく方針
動きますね。じゃ、立ちましょう、よいしょ!→ガクガクブルブルヘナヘナ(退院翌日)

お二方の見立てと施術方針が食い違っていてなんかなあと思った時もありましたが、両方が必要でそれぞれの足りない部分は私がカバーすればよいことなので3カ月ばかり両輪で参りましたがPT氏からの「危ないのでやめときましょ」の連発に私が耐えられず訪問お断りしてマッサージ師さんのみに。

STさん、看護師さんにも運動を引き出す方針で協力をしてもらいながら1年目を走りました。

1年後の関節
さて、転倒覚悟、筋断裂の危険ギリギリを攻めて1年たちまして
尖足になることなく足首の動きはよくなっています。
右の肘を曲げておくクセがとれません。抵抗が強いので睡眠時などに伸ばしておくようにしていましたが効果が薄く骨変形も懸念されます。

おむつ交換にも苦労するほどに固まっていた股関節がきちんと開くようになりました。
回復の期待が薄い60日以上の固定に対してなかなか上出来だと思います。

関節の動きを維持しつつ日常動作を引き出す2年目
体力が徐々に回復してくるのに連れて毎週3回の訪問施術での動作がプロの技なればこそのダイナミックなものになっていきました。

予習、復習、訪問のない日に私の手でサポートして運動することが難しくなったのと、動作と筋力へ施術の焦点が移り施術時間内の関節へのアプローチが減ってきたため、補うのは私という責任は重くなる一方。しかしながら生活を支えながら時間を捻出するのは正直キツイ。栄養が足りて体重が増えてきた主人を動かすのもキツイ。

自発的な運動ができない&反射が正常に出ない状態で前進をするためには「無理」をさせて壁をこえ扉を開けていく必要がありますが、現実問題、キツさにまけてついついさぼりがちになります。それが拘縮へとつながってしまうかという恐怖と自責の念はとても重かった。

そこで、ケアマネさんを通じてからだの大きな男性ヘルパーさんをさがしていただき支援をお願いしました。ヘルパーさんとの約束があるからやらねばと自らを縛る意味でもあり、食事やトイレを手伝ってもらえ、起き上がりや移乗をお任せすることができて私に時間的体力的な余裕が生まれとてもうまくいきました。

さらにヘルパーさんが皆さん、筋トレ、ボディメイク系の方なので栄養や身体機能のおはなしも弾みます。

2年がすぎようとする今
拘縮に関していえば1年目の状態をキープ、運動方面では少し前進して歩行やしゃがみこみなどができるようになっています。しかし、今だ正常な反射が出てこないので誘導なしの自発的な運動は不可能で油断をすればたちまち拘縮に向かう危険と背中合わせです。右の肘の変形は骨にまで進行してしまっているようで、完全伸展は無理な状態。今後のリハビリのためにもなんとか日常動作に必要な可動域を確保しておきたいと拘縮予防動作は続ける必要があると思います。

筋力トレーニング

筋肉の復活は早かった。
リコードの筋トレでしっかり筋肉をつけていた記憶が体に残っていたのでしょう。動かし、負荷をかけ始めると目に見えるスピードで戻っていきました。体力に余裕があり可能な時に十分な筋肉をまとっておくことは不慮の事態に対して武器になると言えそうです。

困ったことに筋力が戻ることで関節の運動に対する拒否と抵抗の力が強くなり、ちょっとやそっとで動かせない。お互いに力を振り絞ってのプロレスの如し。それがまた筋トレになりついでに私の身体にも効いてきて、まあ、悪くはないのですがくたびれます。

とはいえ構造的に体重を支える体幹と脚の発達はまずまずですが、自発的な運動が出ない腕、肩を鍛えるのは容易ではなく今後の課題になっています。

退院翌日 筋肉の萎縮がはっきりと見える

1週間後 早くも戻り始め

約2年後の現在 車いす使用3年の脚には見えない(笑)

嚥下トレーニングと食の広がり

これについては本人の食い意地の勝利としか表現できません。意欲があるとリハビリの進捗が半端ないですね。もちろん器質的な問題もあるので精神論ですべてを片付けてよいものではないと思っていますが、やる気満々で取り組めるに越したことはありません。

禁食・嚥下反射なし
退院時の診断と生活指導は「嚥下反射が出ないので口に入ったものが肺に落ちるリスクが高く経口での摂取は禁止とする」

ん?
ぽかんと開けたままの口が乾燥しないよう適宜水や麦茶の噴霧 ...をしているとゴックンとやってませんかね?(とても弱々しいですが)

これって...スプレータイプのサプリメントいけるってことじゃね?

ヤバと思ったら吸引すれば間に合うかな?

と言った観察から経口を進めていきたい私。「反射が出ないんですから、目の前で窒息なんていやでしょう?」とDr.。反対をしないまでも「長期戦を覚悟して、それでもどうなるかわかりません。。。」ワクワクしている私を気の毒そうに眺める嚥下訓練担当のST氏。

失われたものは何か
リハビリ全般に言えることですが、動作のを取り戻すために正しい反射が出なくなっている原因について考えながら進める必要があると思います。

1.アルツハイマー病の進行により嚥下反射をつかさどる中枢部位が侵された
この場合は復活は困難でしょうし他にも中枢由来の危機的な症状が押し寄せてくる命の瀬戸際と言えます。

2.中枢は生きており伝達のシナプスが切れてしまっている
正規ルートがだめになっていてもバイパスをつくれるだけの神経細胞の余力があればなんとか復活を狙えるかも。

3.使用しなかったためシナプスが休眠している
刺激で覚醒させればもとに戻るはず。

外からの観察で状態を正しく判断するのは難しく、誤嚥は窒息や肺炎につながり危険なので診断をする場合は1.を想定しているのでしょう。アルツハイマー病という疾患の特性もありますし。

しかし、そこで長いものに巻かれてしまってはリコードファイターYOROZUの名が廃ります。ミストに反応して口腔にたまった水分を何とか飲み込んでいる様子を見ると3.少なくとも2.の状態と思われ驀進した結果、5か月間という異例の速さで嚥下、咀嚼を取り戻すことができました。はじめは気の毒そうにしていたST氏がだんだん前のめりになり教育機関での資料に使いたいとビデオ撮影をするなど、関係者皆で応援団となって盛り上がりを見せました。

このスピードから考えて恐らく「休眠」だったと思われます。たまたまうまくいったに過ぎないのですが、危険を承知でのアタックがなければ成果はついてこなかったはず。一つだけの命、一度だけの人生どうしたいかだと思います。

経口摂取のメリット
胃瘻とは、薬やサプリメントに便利なので今でも仲良くやっています。


胃瘻はとても優秀な補助ツールだと思いますが、経口での栄養摂取には咀嚼することで唾液のアミラーゼが使える、胃液の準備ができるなどの胃瘻にはないメリットがあります。

また、咀嚼することで顎を動かす筋肉に信号が入って強化され、ぽかんと口をあけたままでいることが減ってカンジダの繁殖を抑えるなど口腔内の環境もよくなっていきます。

当然ですが使える食材が増えて自然な形で栄養バランスを整えることができ栄養効果がメキメキ現れます。さらに、私も毎食ミキサーで用意していたころの緊張から解放されたのもメリットです。

食だけでなく経口で食べられるようになると食べ物を通して外界への興味が現れ視野に映るものを「見よう」とする、そのために首の向きを変える運動が出るなど。そして介助者とのコミュニケーションの機会が増えることで感情の表出を取り戻すといった栄養面だけでない効果が出てきました。今は食べ物の方へ手を伸ばす日が来ないかとひそかに期待しています。

すべては「攻め」なければ為すことができなかったことです。

生活動作をとりもどす

これについては現在進行形でとても苦労しています。正しい反射は出ませんが完全な麻痺、脱力ではないので恐らく中枢は生きています。しかしシナプスが脱落してしまっており再構築するには残存する神経細胞が十分ではないのかもしれません。

「食」のように意欲を掻き立てる明確な目標を自覚させることも難しい。そもそも意味性失語なので言葉で諭しても効果はない。本人的にベッドで横になっていることが一番楽で、生活すべてを介助してもらえる状態に満足してしまっているのでリハビリは苦痛でしかないので定着するはずもなく。感情の表出もないので、達成感や悔しさといった感情を利用するのも困難。

といった初期状態から、危険を承知で一歩先、一歩先の動作を無理やりに引き出して2年が経とうとしている今

自ら立ち上がって移乗に協力する
手引きで歩行する
介助で浴槽から立ち上がる
しゃがみこむ

と言った動作が安定してできるようになっています。
ADLを覆すには至りませんがコツコツと続けることでもう少し取り戻せそうな気がしています。

中枢的な変化

この部分の変化には正直驚いているのです。
本来アルツハイマー病では神経の変性が進んでいくはずで本質的には失う一方のはずなのですが、この2年の間に

呼びかけに反応する
興味あるものを目で追う
要求を声で伝える

と言った中枢の活動が器官に伝わっていなければ不可能な活動がよみがえっています。意味性失語の症状はコロナにかかる以前から強くあり、3年以上前から呼びかけ、声掛けに反応することが少なくなっていましたから、訪問のスタッフとの会話に視線や首を向けて聴き入っていたり、「立てますか?」といった問いかけに「ハイ」と返事ができたりする場面に遭遇するたびに、これはコロナ以前より状態がいいのではないか?とさえ思ってしまいます。

音と光と他者とのコミュニケーションがある世界で恐怖と無縁で生きていられれば何よりです。


表情筋の動きも出てきました。声を出して笑う日が来るとよいのにと思いながら待ちます。


メチレーションありき

ここまで危険を覚悟で前進することを続けて手に入れた成果をならべたててきましたが、これらのリハビリは生活を取り戻すためというより進行性の疾患であるアルツハイマー病にからめとられてしまわないための「防御」だということ、そしてその中で最大の手立てはメチレーションだということをシリーズのおしまいにもう一度確認します。

どんなリハビリもむなしい。何をしても終末に向かう進行を止めることはできない。

それがアルツハイマー病です。
加えてⅢ型アルツハイマー病では毒性物質によるダイレクトな神経細胞へのダメージによる苦しみを伴う。

メチレーションに取り組んで

代謝を改善してエネルギーを供給する
解毒・排毒を促進して神経に対する脅威を取り除く
遺伝子発現調整を経て外界の変化にしなやかに対応できる身体を目指す
神経再生と刈込みに挑む

これらがアルツハイマー病に対する攻撃であり、迫りくる命の危機に対しての最大の防御となると信じて続ける以外にありません。

介護者の負担と福祉サポート

追加でもう一言。
すべてを介護者一人が担うのは重すぎます。頼りになるサポートスタッフに出会えることも闘い続ける鍵になると思っています。


インフォメーション

ヨロズ公式Webサイトはこちら。
ReCODEプロトコルver.ヨロズ、他、全活動についてご案内しています

無料で登録いただけるフォーラムを開設いたしました


Facebookグループ 何ぴともアルツハイマー病で死ぬなかれ! ではヨロズのヌートリジェノミクスNOWを主にライヴで発信中。



ヌートリジェノミクスの第1歩
メチレーション関連遺伝子検査↓こちらです
23andme の遺伝子検査を検討なさっておられるなら、こちらをおススメします。あとあととても役に立ちます。


なんでこんなにお値段が!?ってほどの違いがありますが、

88ページのガイドブック
247ページの遺伝子別 対応の手引き
63ページのそれに対する解説

検査結果に対する解析、アドヴァイス、すべて日本語でサポートなしで乗り切るのはかなりの根性がいるものかと思われます。
経済的に苦しいヨロズは可能な限り英語で頑張ります。

ヌートリジェノミクスは まずこちらの本から


Amyプロトコルの日本語による全面サポートはこちらです


YOROZUが運営するFacebookグループです


Facebook・Twitter・mail など個人的に連絡くださるのも歓迎します。
主人は改善が難しいと言われる型ですが 私たちは歩き続けています。

ヨロズオリジナルグッズ

闘病7年目の精神世界を描く奇跡のアルバム「今吾誦(いまあじゅ)Image san nom」
CD  \1,800 楽譜¥2,200+送料 お問い合わせください

デジタル音源ダウンロードはここから
全曲試聴もできます

CD「おかえりなさい」2020年リマスター版
¥1000+送料  お問い合わせください
デジタル音源ダウンロードはここから
オリジナルリコードソング3曲は必聴!全曲試聴もできます


Youtubeチャンネルにリハビリの様子が時系列でならんでいますYOROZU×YOROZU

生活視点 生身で体当たりのブログはこちらです~そのまんまでいいよ&ゆっくりしいや~こちらもよろしくお願いします

コメント

このブログの人気の投稿

驚愕!デトックス能は復活&絶好調:メチレーションで終末期からの逆転を狙う(その4)

メチレーションで終末期からの逆転を狙う(その1)

リコードプロトコルver.ヨロズ 振り返りレポートシリーズ

カビ毒がゼロになった!ヨロズハイパー解毒(その1)

ああ、代謝の個性を無視しないで!:メチレーションで終末期からの逆転を狙う(その3)

胃瘻は戦闘ツール:メチレーションで終末期からの逆転を狙う(その2)

Ⅲ型アルツハイマー病との闘いが行きつく先は?(その7): 5年分の解毒作戦総括 (5)骨に潜む鉛、毛髪での検出は遅れてやってくる

緊急事態 現時点での考察/水銀があやしいかも

ホモシステインの値は何も語ってくれない(その4):手段と目的を間違えないでね