胃瘻は戦闘ツール:メチレーションで終末期からの逆転を狙う(その2)

 侵襲的な延命行為としてその是非が議論に上がることが多い胃瘻。

コロナ罹患からの重症化、回復の見込み薄いと言われたICUからの生還、そして退院後に超回復を遂げるにあたり退院の条件としてやむなく造った胃瘻が退院後の代謝の回復に、解毒に、メチレーションケアにと大活躍してくれました。

導入時には絶望に近く迷いました。実際に生活してみて、命を支えるツールとして強力であり、また、アルツハイマー病と闘うための飛び道具としてとても便利であることを知りました。

ケースは様々で私たちの経験が誰にでも当てはまるとは言えませんが記録としてレポートいたします。

シリーズ記事


命の終わり方から考えた医療的処置の意味

アルツハイマー病と生きるということは緩やかに「死」に引き寄せられていくことにほかなりません。長い時間をかけて確実に世界をもぎとられていくあらわしようのない苦しみの果てに、3型アルツハイマー病の場合はさらに毒性物質によって身の内側からの責め苦が付加され、もがきながら絶命する。アルツハイマー病への根本アプローチをやめることはこのようなおぞましい「死」を受け入れることなのだと再度確認して進めていきましょう。

根本アプローチとなる治療対策を続けることができるか否かを考える

今回の主人のケースにおいて、単なる医療的延命技術と必要な治療的行為を分けるポイントと言えると思います。

過去記事

この時点よりも更厳しい状況に遭遇しての考察となります。

生死の境をさまよって

2023年1月、主人はCovid罹患から重症肺炎になり誤嚥性の肺炎も併発して生死の境をさまよっていました。血中酸素濃度が70%を切り、血圧が低下するなど厳しい闘いです。

この闘いの中いくつかの選択をしました。
ひとつめ、吸入酸素を続けて酸素濃度が回復しない場合、人工呼吸器を使うか否か。ふたつめ、血圧が上がらない場合末梢からの点滴では血管が耐えられない高濃度の昇圧剤を使うために中心静脈点滴をするか。

これらの手段は必要なほどに状況の悪化すると回復の見込みが非常に低いうえに一旦導入すると打ち切ることが難しく回復の見込みなく延々と苦しみが続いてしまう可能性があります。

Dr.からの問いかけに、延命の処置はお断りしたうえでできるだけ安楽に見守ってもらうこと、できればコロナで会うことができていない家族、中でも高齢の義母が駆けつけられる時間を持てるようおねがいしました。ベッドサイドには行けず部屋の外でという条件でしたが。

肺炎という終わり方

結論を言うと、終幕にはなりませんでした。しかしこの時に考えたことです。

ICUでの闘いにアルツハイマー病治療対策を語る余裕はありません。少ない時間で燃え尽きる幕切れはアルツハイマー病での長くておぞましい終わり方よりもはるかに本人の負担が少ないとおもわれます。命さえあればのゴリ押しに意味があるとは思えません。誰しもいつか最期の時がきます。苦しみを短くさらに医療技術で緩和してもらえるならば悪くない終わり方です。不意打ちという残念さを除けば。

胃瘻造設までの経緯

緊張の1週間が過ぎて
主人はもちなおしました。次は命の底力を引き出し回復させる方角へとシフトです。

感染症に対抗する体力を確保するための栄養摂取の方法として経鼻経管栄養の導入を提案されました。失語症のため意識レベルの確認も難しく誤嚥の危険が引き続きある中で手っ取り早く腸管を動かし栄養状態を改善して全身の状態を向上させることをねらった策ですが、アルツハイマー病的には一旦経口の食事をやめると嚥下そのものを忘れて失ってしまう可能性が高くなりますがどうしますかということでした。

今後のQOLもありますが生きることが優先、栄養状態の改善はアルツハイマー病対策のベースでもあります。その気であれば管からサプリメントを投入することも可能(当然却下されました。かなりねばったのですがね)。命があればまた回復対策を施すこともできますから。

立ちはだかるアルツハイマー病と失語症

非常に危ないと言われながらのICUでの孤独な闘いが2週間続いた後、経鼻経管栄養の状態で回復期病棟へと移動しました。回復期病棟ではSTによる嚥下、PTによる動作のリハビリが開始されるはずでしたが、認知症と失語症のため言葉での指示が入らないとリハビリ不可能の判断をされました。

このあたりから私の焦りが始まります。

入院中ですから管理を病院に任せるのが筋ですが、肺炎とその後の回復にフォーカスされたケアでは、こと、アルツハイマー病に関してはどうにもずさんに感じずにいられません。単調な生活もですが鼻管から投与されるパックの流動栄養はアルツハイマー患者にとって最適なものとは言えず、説明時に見る血液検査の数値にも代謝の崩れが見られ何度も抗議をしました。病院側の回答は「問題になる範囲ではない」でした。流動栄養と代謝については記事を改めてレポートいたします。

代謝の崩れから大規模な神経破壊を招くかもしれない。神経破壊が起きてしまったら取り返すことができなくなる。肺炎を超えられてもアルツハイマー病で一気に終末を迎える。退院のめどが立たない中、焦りは恐怖へと変わっていきました。

入院3週間。酸素吸入、点滴、排尿、次々と管がぬかれて転院できるリハビリ病院をさがす段階になりましたが、頻回の喀痰吸引に加えてここでも認知症と失語症がネックになり、意思疎通ができない困難ケースは受け入れられないと断られ続けることになりました。相変わらず誤嚥のリスクありで禁経口、水すら飲めず経鼻経管栄養です。面会もできずにダラダラと入院生活が続きます。病院にいる限り神経破壊を食い止めるための努力すらできない。それならばリハビリ病院を経由することなく自宅にもどることはできないだろうかと行動を始めました。

自宅療養のために

アルツハイマー病対策を行うためには一日も早く自宅に戻す以外になさそうです。

まず、自宅での経管栄養や喀痰吸引について調べ、それらをたずさえて地域で訪問医療をおこなっておられる開業Dr.をたずねました。

「それは、無理です。施設でも受けいれてくてるところもないんではないか。退院してもすぐまた肺炎で病院に送ることぐらいしかできないし、僕が緊急の時にいつでもすぐに駆け付けられるわけではない。世話をすると言ってもあなただって眠らずにいることはできないし、資格がないとできないこともある。一つ言えることは経鼻ではなく胃瘻にすることです。胃瘻にしても誤嚥はします。そして、やはり僕は受けません。無理です。」

けんもほろろでしたね。

となるとリコードファイターYOROZUとしては余計に燃えます。資格が必要なら退院までに取ってやろうじゃないか(無理でしたが)と調べ研修担当へ問い合わせ、訪問診療のクリニックに片っ端から電話をし、訪問看護との相談etc.

往診専門クリニックの院長先生に「ただでさえ残り時間が短いアルツハイマー病、離れて暮らしていて何もいいことはないです」と訴えたところ「その通りです」とお返事をもらえて「訪問エリアから少し外れますが、伺いましょう」とのお返事を頂けました。が、ここでも在宅にするなら胃瘻は必要ですよと言われました。

どういう事だろう。この時点では身体を傷つけてまで栄養注入口を作る胃瘻には抵抗がありました。さらに唾液を誤嚥してしまうような重度の誤嚥は胃瘻で回避できるわけではないこと。身体を傷つけてその効果では悲しいではないかと。また別の情報で気管切開して気道と食道を分離することで誤嚥回避は可能になることも知り、それならば誤嚥リスクをなくしたうえで嚥下訓練をすることができるではないか。声は出なくなるけれどすでに失語症で言葉を失っている。お腹に穴をあけずとも。しかし、喉には穴が、やはり身体を切り刻む。

悩ましい限りでした。

胃瘻について考えたあれこれ

胃瘻についてのお勉強はこちらへ→胃瘻(いろう)について

そして考えたこと
・胃瘻後の余命は2.5年(結局すぐ死ぬんかい!)
・胃瘻でも誤嚥性肺炎になる(なんだと?だから長く生きられないのか)
・胃瘻からの離脱、復帰は約5%(へー意外、回復例もけっこうあるんだ)
・鼻管よりも経口摂取のリハビリが成功しやすい(そりゃ喉を管通ってたら邪魔だわね)
・経口摂取不能は約85%(まあそうやな)
・脳梗塞に比べて認知症は離脱例が少ない(だよなーリハビリもやりにくいだろうしね)

それはどうてもよい(よくないけど)として、アルツハイマー病治療対策はできるよね?胃瘻がどうであれアルツハイマー病を退けることができればすべては好転するはずです。とにかく急げ!

自宅に連れて帰らなければ対策はしようがない。そして自宅療養のサポートを受けるために胃瘻が必要だというのなら造設する以外の選択肢はない。脳神経の保護と育成、できないまま、やらないまま命をあきらめるのはナシでしょ。やってもどうしようもないかもしれないけれど、やらないよりはマシ。

病院から次の場として提案される療養型病院を断り胃瘻造設が可能な病院に転院、造設手術、退院にたどり着いたときには救急搬送から2か月の日々が過ぎていました。

胃瘻とともに生活をして

以上が胃瘻造設の経緯となります。判断したり選択したりというよりは仕方なくといった感があります。
さて、いよいよ実際の生活してみての胃瘻のお役立ちを語りましょう。

繰り返しますが私たちにとって生活イコール人生をからめとろうとするアルツハイマー病から逃げる努力をすることです。

摂取量の管理

必要な栄養、水分を居眠りしていても投入できる。栄養摂取は身体を支える基本。あのコロナで発熱した時、もしも胃瘻があったなら水分もしっかりと摂れて脱水になどならずに済んだだろうな。

消化吸収の調節

手作りミキサー食を使うことができる。おなかの具合に合わせて食材を選んだり消化剤を混ぜ込むことも可能。消化吸収のよい「半固形栄養剤」が使える。経鼻経管では難しい。

服薬

苦くて飲みにくい薬でも大きな錠剤でも溶かして確実に注入できるので安心(薬剤は溶かすと激マズになるものが多い)。発熱時の解熱剤、感染症の抗生物質で重宝した。もしも胃瘻があったならコロナも重症化せずに済んだかもしれない。

サプリメント

医薬と同じく必要量を確実に摂取できる。ビタミンやハーブ類、サプリメントのMIXは、はっきり言って不味いけれど直接胃に入るので問題ない。大量の錠剤やカプセルを飲み込む苦労とは無縁。ヌートリジェノミクス実施の強い味方。

DETOX

さらに飲み下しにくいたっぷりの水で溶いた吸着剤も胃瘻ならばしっかり投入でき、この1年でQSS製品を使ったDIY排毒プロトコルを2セットを終了できた。

予想だにしていませんでした。なんと胃瘻はこれらがすべてノンストレスで完璧にできてしまうツールだったのです!

胃瘻があったから

退院して即日、栄養の補正をスタートしました。昼間はできるだけ座位で過ごす、車いすへトイレへと移乗のたびに立位(まったくできないけれど)への刺激を入れる、ベッドでのストレッチと抵抗運動など寝たきり時よりも増えた消費量に合わせてたんぱく質と熱量を増やし、ヌートリジェノミクスの検査で把握済みの傾向に合わせてミネラルの補正、少なすぎた排尿量を標準に戻すべく水分の補正。

当然のことながら身体がみるみる変わっていきました。運動量が限られている状態で、計算したものが無駄なく投入されると変化が鮮やかに出る。これまで見たこともないみごとな栄養の力に驚いたものです。

続いて注意深くメチレーションケアをスタート。半年後メチレーションの復活にともない毒性物質の遊離の兆候が見えてきたところでDETOX。このころにはDETOXに耐えられる体力が十分についていました。


帰宅翌日


2週間後


半年後


1年後

生きる努力を続けるためのツール 

栄養の下支えがあって順調に進んだリハビリ、年単位と言われていた嚥下訓練が 爆速で進み退院5ヶ月で完全に経口食を取り戻しました。食事は普通にいただきますが引き続き緊急時のためとプロトコル前進の助っ人として胃瘻とは仲良くやっていく予定です。

継続することで排毒が進み少なくとも毒性物質の影響は軽減されて残りの人生、身体の内側からの苦しみは軽減されるはずです。さらにあわよくば神経破壊を止めて生き続ける、その時間を豊かに、いくばくかの脳神経再生で自立した生活へと進むことができればさらに素晴らしい。

生きるためのツールとして大いに活用していきます。


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