若年性アルツハイマー病診断の意味 / ほんとうは最初期に知りたかったこと


こんにちは&はじめましてMUSICA YOROZUです

若年性アルツハイマー病 中期にさしかかり
生きがいだったオーボエの演奏を奪われていく音楽教師
ゆるやかに変化していく日常は見知らぬ世界へ
同行二人旅の記録となります

様々なタイプがあり それぞれの症状がある若年性アルツハイマー病において
私たちが体験する実例その5


これが現実アルツハイマー病全10話の続編です



尻尾をかんだ蛇

脳機能の低下によって引き起こされる症状を自覚するのも脳機能である
アルツハイマー病にかかった脳は自らが破壊されていく危機感を感じ続けることができない
ダメージがダメージの存在を意識の中から消していく

へびが自らの尻尾をくわえ 自らをのみこんでいくように

アルツハイマー病はどこへ向かっていくのか

物忘れ?
行方不明?
踏切事故?

トイレ?
食事?
着替え?

脳の萎縮が身体の機能をひとつずつ奪ってく

姿勢の保持
歩行
嚥下
消化
排泄
呼吸
心拍

そして 命

老年性と混乱する情報

3年前の初診時にイメージできたのはせいぜい上の6つまで
そしてその介護が延々と何年も続くのだろうと

「それがどうした、ドンとこい!その条件で さて 人生どうやって充実させてやろうか」と私は気合をいれた

病院や特養での音楽ボランティアをして (老年性の)アルツハイマーの方とはかかわってきていたので主人も その年齢 その進行度をイメージしたのだ

「病気とつきあいながら30年ぐらい?」

知るはずもなかった
若年性アルツハイマー病 診断後平均余命は7年である

認知症社会への警鐘のかげで

近い将来 認知症の増加はまちがいなく高齢化した社会の大きな問題になる

そのため「アルツハイマー病」に対する関心は高く 最新研究から ただの興味本位のものまで情報があふれている・・・

最終的に同じ経過で死にいたるのだが老年性アルツハイマー病と若年性アルツハイマー病は別の病気である と 今 私は認識している

氾濫する「アルツハイマー」関連の情報。その中で 個人差が大きくて、実例や経験者ともに少ない「若年性アルツハイマー病」の さらに自分たちにとって適切な情報をどうやって探しあてられるだろう

当事者デビューをしたばかりのころから 混乱と誤解と努力と落胆とをくりかえしながら ひとつひとつ 「思い知らされて」行く そして現実を踏みしめてまた立ち上がるしかなく 今後もそうするしかないとおもっている。

できることなら今後同じ絶望を味わう人が一人でも少なくなればと願いながら

初診直後からのチャレンジ

入院検査の結果
シンチグラフィー 脳PET ともに左側頭部の機能の低下あり
髄液中のタウ値はグレーゾーン
心理 作業検査では短期記憶と処理速度に大きな落ち込み
逆に 言語操作 抽象思考は高ポイント

総合評価では年齢標準を100として108%であった
診断はMCI(軽度認知障害)・経過観察

無意識の努力で喪失を補っていたとおもわれる

はじめのチャレンジ

音楽教師 業務に差しさわりはない。定年まで6年と少し 末の子供はまだ高1だった

「たぶん定年まで勤められますよ」

いくらなんでも その言葉は割り引いて聞くべきだと思った。3年?いや4年ぐらいだろうか

本人には全く病識&危機感がない

退職後のライフスタイルの準備をするべく 私は自宅音楽教室の充実を目標にした

「退職後は教室の講師として かなり長く活動できるはずだ」と

教職で培った膨大なレパートリーと自在な即興演奏は並のものではなかったから

その次のチャレンジ

1年後、あまりにも早すぎて退職後ライフの準備ができないうちに  学校での業務は破綻しはじめた。
ミスはない 事故もない 授業のクオリティは落ちていない。しかし校務のスピードについていけなくなった

過労死レベルと悪名高い学校の現場では 配慮を望めるわけもない
にもかかわらず本人に病識がないので チームとしてペースが合っていないことに自覚がない
人間関係が悪化し 事態が複雑になる

被害妄想や鬱の気配がつきまとう
入院検査で総合評価は年齢標準の80%

自覚のない主人を説得して退職願いを出してもらうための作戦

「定年まで待ってたら老後の楽しみにしていた演奏活動する暇がないよ?」

そして

ボランティアのできる場所を開拓してまずは私ひとりで活動を開始。年度末の退職を待った

校務はともかく音楽科の授業を手放させたくない&自宅音楽教室の準備は不十分な状態に対する対策としてユニットYOROZU×YOROZUとしての活動がはじまった

さらにチャレンジ

ユニット始動時点での強力な武器だった ピアノの即興伴奏能力はは2ヶ月で消失した!

残るはオーボエ。このころ総合評価は75%

ピアノとは比べ物にならない執着での取り組みで 「いつかは・・・」と意欲を燃やすバッハ / シューマン / モーツアルト
リクエストに応えるために 唱歌 日本の歌は オーボエに最適なアレンジをつくった。見やすい楽譜を何種類もつくった。何度でも使えるように。少なくとも今後2~3年は使えると見込んで

1年後の現実

1年間のユニット活動の結果として ジタバタした記憶と2年目はもうないという現実 それから使い道のない大量の楽譜が残った

本人の病識と危機感はさらに薄れている

主人は「未来」に向かって新たな曲の仕込みと基礎練習に余念がない

残っている機能の観察から 演奏可能に調整した楽譜作りが続いている

最も厳しいケースを知っておきたかった

サポート家族の実感
創ったものが あっという間に手からこぼれ落ちる。わが身で知った進行のスピードだが正直これは厳しい
無知ゆえに未来に疑いを持たずに全力を投入してきたのだから


診断後余命7年がならば ざっくりと

初期(2年)残った能力を活かしてイキイキと活動できる
中期(2年)サポートに支えられて安心して生活できる
後期(2年)介護をうけながら穏やかな生活ができる
終末期(1年)医療が必要

このように進行すると言えないだろうか
診断確定からもうすぐ2年がくる
主人は計算通りに初期を通過しているようである

これよりも時間があるようなら
それは ラッキーに感謝すべきだ
本人の生きようとする力と サポートや努力が奇跡をよんでいると思おう

時間はない。それが若年性アルツハイマー病の現実なのだと本当に最初期に知っておきたかった

知っていればチャレンジはしなかっただろうか?

たぶん変わりなくチャレンジしたことだろう。しかし 落胆と疲弊の度合いは違っていたとおもうし、もっとやれたことがあったかもしれない。
実際 私たちはチャレンジができて幸せだったし これからもチャレンジはつづく。
主人の希望をかなえるためのサポートでジタバタした記憶は何物にも代えがたい。
いつか記憶が消えたとしても 共有した時間の印象は消えないと信じている

『知る』ことは絶望か希望か

知りたいか知りたくないか
人により意見が分かれるところだと思うのですが 一番厳しい現実を知るところから 最善の選択ができ希望が生まれるのではないでしょうか

予防法なし
治療法なし
進行の抑制 むずかしい

残された時間を一番わがままに使う、本気の取り組みが続きます

初診から3年と4か月
診断確定から1年と10か月 まだまだできることがあります


みんなで若年性アルツハイマーな生活を理解しようの会

下記リンク 興味をもっていただけましたら ぜひともご参加ください




渡れない川をはさんで

私には主人から見えている世界を正確に知ることができず また 主人の方からも私のいる世界を把握することがむずかしくなる そして 二つの世界をへだてている川は時とともに幅を増していく日常です

生活視点 生身で体当たりのブログはこちらです~そのまんまでいいよ&ゆっくりしいや~こちらもよろしくお願いします

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