STILL ALICE に描かれている アルツハイマー当事者から見える風景にふれて思ったこと
こんにちは&はじめまして
MUSICA YOROZUです
初診から3年と5ヶ月
診断から2年になりました
若年性アルツハイマー病
主人の住んでいる世界を知りたくて
ずっと興味をもっていたのです
2007年にアメリカで自費出版されて
200万部をこえるベストセラーになった小説で
映画にもなりました
神経科学博士であられる
リサ・ジェノバさんの作品です
最近 お友達が
リサ・ジェノバさんの講演のVTRを紹介してくださって
「そうだ!やっぱり読もう」
と
邦訳本を手に取りました
言語・心理学の研究者でハーバード大学の教授がアルツハイマー病を発症する
本人の視点で目の前に展開するワンダーランドを描いていきます
小説だとわかっているのに
とんでもないリアリティーに圧倒されそうでした
きっと
著者の臨床研究での多くの実例をより合わせて描かれた光景なのでしょう
「現実」の集合体
決して単なるフィクションではありません
ひと月ごとに変化を追って
物語は各章ごとに
200X年〇月
という見出しではじまり 2年間の出来事をつづっていきます
診断からちょうど2年の主人
この2年間の転がるような主人の変化と
ほぼ同じはやさで物語が展開していきます
診断が確定するかしないかのころから授業スキルの低下にあえぎはじめ
半年後には部署の業務スピードについていけなくなり
退職
変化に対応するように準備した物たちが
次々と意味を失っていった主人の2年間と同じ展開
これまで
よく目にするアルツハイマー病のかたの記録に比べて
「なぜ、主人だけがこんなに・・・」
と 辛く 悲しい気持ちでいましたが
「そうだよ、この速さなんだよ!」
と心の中で呟きながら読み進めました
そして やっぱりちがう!
主人の病気のタイプは
まず、海馬にダメージが来る 典型的なアルツハイマー病ではなくて
記憶の能力をたもったまま
判断力や運動の機能を失っていくというもの
そして読める わかるのにカミカミになってしゃべれない
小説の中で主人公が遭遇する不思議体験は
いつもの街が突然見たこともない景色にかわってしまう
目の前の自分の娘が分かっているけど
どう見ても実感ではそのように見えない
玄関のマットが突然大きな穴に見えて吸い込まれそうに感じる
などの強烈な感覚になって押し寄せる
これは
脳のどの部分にダメージがあるかの違い
まるで目の前で起こっていることかとおもえるほどに見事な描写で追体験して
ちがうダメージの 主人独自の状態からも
内面での経験はどんな具合何だろう?
いったいどんな光景がみえているんだろう?
と思い描くためのヒントをもらえたように思えます
優性遺伝するアルツハイマー病について
この小説の主人公は
プリセリニン1(PSEN1)という遺伝子の変異が陽性という設定です
この若年性アルツハイマー病を引き起こす遺伝子は優性遺伝
子どもに伝わる確率は50%で
遺伝子変異があると100%の確率で発病することがわかっている!
この遺伝子のことは知っていましたし
他にもPSEN2やAPPという遺伝子が関係していることも知っていました
実際、入院中に 病棟医長先生から
「遺伝子検査はしますか?」と訊かれたおぼえがあります
情けない話ですが 動転していたのでしょう
「お願いします」
と 答えたつもりだったのですが
どうやら主人は検査を受けていなかったらしいです
「わかってしまうことで ご家族 お子さん方にも影響がある検査ですからねえ・・・」
そんなフレーズを得体のしれない不気味さとともに記憶しています
けれど
本当のところは何がどう影響するのかわかっていませんでした
(状況証拠的に主人は陰性のようです)
さて 小説の中で家族の対応
子どもたちとその配偶者の行動が織りなすドラマとして描かれ
初めて 現実のことと理解・納得ができました
不治の病
もしも将来必ず発病することがわかってしまったら
知る権利もあり 知らない権利もあります
これはアルツハイマー病だけのことではなく どんな病でもおなじこと
知ったことでとれる行動はなにかということも考えさせてくれました
優性遺伝するアルツハイマー病
近く この病気が解明されて 根本的な治療ができる日が来るのをめざして
研究がされていることも
私たちの孫の代ぐらいでしょうか?
そのまた孫の・・・?
これから
この本を読み終えて
具体的な状況を思い描き 同化してみることが
たくさんの気づきと学びになることを実感しました
結論は読んだひと
それぞれの中にあっていいのだと思います
もちろん多くの臨床例から抽出されて
作品として厳選 構成が為されている効果も大きいことでしょう
しかしですね
現在進行形で若年性アルツハイマー病と生活しているわたしたちでも
できる限りの冷静なレポートとして現象を綴っていければ
いつかどこかで 誰かのお役に立つかもしれない
なんて 思ったりもしたのです
どんなことであれ「誰かのお役に立てればいいじゃないか」
今も不便ながら前向きな努力をおこたらない主人、きっと ずっと そう言うでしょう
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