アルツハイマー病とどう生きていくか あまりにも過酷な選択


”The End of Arzheimer's”「アルツハイマー病の真実と終焉」の
ReCODEプロトコルをもとにした取り組み11カ月めとなりました
Dr.BREDESENも回復困難というⅢ型です

待ち望んでいた”The End of Arzheimer's”の邦訳「アルツハイマー病の真実と終焉」が発売されて1か月経ちました。

メディアで取り上げられたり 少しずつ知る人が増えているのはとてもうれしいことです。

半面 これまで個人的に取り組んできた間に感じていた困難さがこれによってどれぐらい解決できるのだろうか?という疑問も感じています。

ReCODEに取り組むという選択そのものにあるリスクや取り組まないという選択の意味するところなどを 体験から考えてみたいと思います。

標準医療でできることと予後について

今のところアルツハイマー病に対する根治療法は存在しません

Dr.「残念なことですが この病気は進行しますから、ポイントが下がったからとガッカリしないでください。うまく生活できているとおもいますよ。では、また次まで・・・元気でお会いしましょう」

残された時間をできるだけ有意義に では、その時間はどれくらい?進行のスピードは個人差が大きいけれど、大まかに 過去の落ち具合から未来を予測することができる。
主人の場合 1年間での落ちがMMSEで約6ポイント 単純に計算して診断後5年で落命する予定となる。

初期の投薬

アルツハイマー病では伝達物質のアセチルコリンの生産が減ってしまっているので アセチルコリンを分解する物質の働きを止める 対症療法的投薬がされる。有名なのはアリセプト。他、ドネペジル、ガランタミンなど。主人は摂取し忘れが目で見てチェックできるリバスチグミンのパッチを処方してもらった。少ないながら生産されているアセチルコリンが分解されないため 脳内がアセチルコリンのプールの状態になり 伝達がスムーズになって、認知機能が回復する。アセチルコリンには神経保護作用もあるので 脳細胞の死滅もいくらか食い止めることができる。即効的に改善がみられる。

しかし 

常にアセチルコリンで満たされた脳内では アセチルコリン受容体が過剰なアセチルコリンのために減っていき、ついにはコリンエステラーゼ阻害剤の魔法が切れて 認知機能の低下がふたたび始まる。投薬ではもう止めるすべはない。主人の場合 リバスタッチで維持できたのは1年足らずで ふたたび 6ポイント/年 の落ちが始まった。診断から1年足らずで早くも中期に突入のハイスピード進行だった。
もう抑制の効果は期待できない、けれど 受容体を失った脳はコリンエステラーゼ阻害剤を止めると 急激なアセチルコリン不足を起こして恐ろしい進行をするため 投薬をやめるわけにはいかない。(神経保護作用による少しの効果は依然として期待できる)

作業療法による維持効果

脳トレーニング 作業療法いわゆるリハビリについては 維持効果が確認されているものが複数あるが 根本的治癒への効果がないため現在保険適用の標準医療では採用されていない。個人レベルの「気休め」という扱いになっている。個人的に言うなら 一時的維持というカテゴリーにおいて 投薬と同レベルに扱ってもいいのではないかと思う。

中期の投薬

中期に入ると 不眠や昼夜逆転 妄想 などがおこりはじめ 患者だけでなく介護者のQOLを大きく下げる。そういった周辺症状に対応するために 漢方薬や 向精神薬が処方される。睡眠コントロール薬や メマンチン、遠志、抑肝散 など。主人の場合も希望すれば処方してもらえたと思うが 生活が困難になってくるぎりぎりのところでReCODEプロトコルに出会ったため 中期の投薬は経験していない。


後期の処置

後期になると 失われた脳機能のために生命を脅かす事故が起こる。初期・中期からの投薬にプラスして医療的処置が必要になる。転倒で骨折、誤嚥性肺炎など。さらに進行すると嚥下機能の喪失に対応して 胃に直接食べ物を流し込む「胃ろう」 痰の排出ができなくなり「気管切開」自発呼吸を失って「生命維持装置」と続くが どこまでを選択するか 当然本人の意思を確認するすべはもうない。

その日を見越して判断能力があるうちに「意思決定書」を作成しておくか さもなければ介護者が決定をするしかないのだが、そのような説明は医療機関から受けたことがない。

選択肢としてのReCODEプロトコル

現在 標準医療でできることが上記のような現実である時にReCODEプロトコルが紹介された。私たちは約1年前に、あまりに厳しかった現実に対して「何もしないよりは」とダメ元でReCODE的行動を取り入れたのだが、今後は情報のひとつとしてどう選択をするのかが 個人個人に問われることになってくるのではないかと思う。

現実に取り組んだ11カ月からの教訓をもとに考えてみたい。


ReCODEプロトコルのお値段比較

お茶の水健康長寿クリニック
邦訳版「アルツハイマー病の真実と終焉」を監修されたDr.白澤卓二のクリニックでアルツハイマー病治療コースがスタートしました。
さてその費用は??
基 本 検 査:54848円
オプション検査:115000円
初診料¥15000 と 特別コンサルティング料¥20000は別途必要
治療プログラム:585000円/月~
恐怖の【/月~】一体天井はおいくらでしょう!?

クリニックの得意とするアンチエイジングとの組み合わせによる独自プログラムだと思われます。


MPI Cognition
ご本家のインターネットを駆使したプログラム指導料
検査代金 治療費等含まない レポート解析と継続的個別アドヴァイス
75$/月(最低1か年)・・・っていくらでしょうか?106円として計算
7950円/月
検査料金は一般血液検査、国内私費、海外個人発注組み合わせて経験から
初期検査:100000~
2~3か月に1回スクリーニング検査:3000円~50000円
サプリメント:30000~円/月 程度と思われます
※現在のところ日本語が通じるプラクティショナーがいない


手作りプロトコルVer.ヨロズ
必死で検索、突撃空振り、あてずっぽうにつきムダと危険がたくさんの自己責任の現実
初診料、指導料、その他無料!
初期(?)検査費用 結局10万円を超えそうな感じですが 現実にはまだできていません。
ここまでに使った検査費用:30000円ぐらい
2~3カ月に1回スクリーニング検査費用:3000円~
サプリメント:40000円程度/月

そして ここ重要かもなポイント

食事療法のため 外食、間食、アルコール、がなくなり 結果食費で浮いた金額と相殺してサプリメント費用は 25000円/月 ぐらいとみられます。

2018/3/25 追記:新宿のブレインケアクリニックの今野医師がReCODE認定となられてMPI cognitionのReCODEReportを駆使した治療を展開なさるという情報が入りました。

詳しくはこちらへ →ブレインケアクリニック

そしてその効果は?

繰り返すようですが 主人は回復しています。
何もしなければ 5年で落命の予定のちょうど真ん中、2年半が経過して MMSEスコア的には初期またはMCI程度。言語と指の障害がありますが 元気に演奏活動ができています。

実行してきた正直な感想です。どの方法を選んでも ReCODEプロトコルは実施する本人とサポートする家族の大変な努力がなければ効果が出てこない。そんな「治療」というよりも健康法的な色合いが強いものです。
毎月100万円近くかかるサポートでストレスを肩代わりして 情報収集の手間を肩代わりしてくれても 確実な実行と回復を約束するものではない気がします。

それでも、手作りプログラムの場合は、ダメ元だと思っていても 現実に本人が目の前にいれば何とかしたいと思うのが人情で「手作り」の不確かさは ものすごいプレッシャーになります。まちがって危険な目にあわせてしまうかもしれない。そのリスクを承知であくまでも自分たちの納得のためなんだ、そうは思ってもやっぱりしんどいです。このしんどさを避けるために毎月有料のサポートを受け続ける?そこはある程度天秤?

標準治療のままに過ごすという選択は?

今となってはよくわからないところですが、ReCODEを知らずに過ごしていた診断から1年と半分の期間には選択するも何もなかったわけです。
その期間に知ったこと、体験したことから もしも標準治療のままに過ごしていたらどうなるだろうかと空想してみます。

現場の大変さはよく話題になりますが その努力のおかげでますます洗練され充実してきた介護 福祉サービスを利用しながら 5年の月日を見守って 別れの時を待っていたことでしょう。(それ以外のストーリーはないのです)受け止める以外にないならばその中で最大の幸せを探していることでしょう。

さて、当然見守りにも費用がかかるのです。進行中の主人は なかなかのクラッシャーでした。物は壊れる、水は出しっぱなしになっている、暖房をつけて一晩窓があいたままだった夜もありました。洗濯の回数が増える。不便になっていく生活をサポートするための器具を購入する。事故も起き 医療費が必要になる。そのうえで私費、有料の施設のお世話になるとしたらどれぐらい?
退職して年金暮らしの私たち 残された時間が短いなら短いなりの夢もあっていいと 自宅リフォーム、バリアフリーで主人の好きな楽器と音楽が同居できる介護ルームをつくったらどうだろう?長くても10年に足りない年月の生活費を差し引いて予算がとれるだろうか?
そんな計算をしたものです。
きれいごとは言えません、QOLはお金と相談でつくっていかなければならないのです。
もちろんそんな選択だってありだったのです。

結局はこれしかない、私たちの選択

あの頃一番つらかったこと

選択肢がなく 現実の中でそれでも夢を探そうとしていたころ 一番つらかったのは「進行の速さ」でした。
「アルツハイマーでも大丈夫、明るくわらって過ごしましょう」
「環境を整えれば進行をゆっくりにできますよ」
どこかで見たことがありませんか?
進行が速くて止められない。
私は主人のために環境を整えてあげられていない 最悪の介護者だと 自分を責めていました。実際にそんな目で見られ そういう扱いを受けました。
「アルツハイマーでも大丈夫だなんてことはない!」ぜんぜん大丈夫じゃなかったです。

ReCODEに出会って 進行の速いⅢ型の存在を知り まさに主人がそのタイプだと理解するまで その思いはどこにもぶつけることができませんでした。幸いプログラムはかなりうまくいっています。自分を責める必要がなくなりました。

厄介な3型アルツハイマー病

これまでのところ 何とか回復方向に進んできましたが、Dr.BREDESENも述べているように 進行してしまったⅢ型アルツハイマー病は普通のプロトコルで対応しても結果が出ません。これまでも痛いほどに思い知ってきましたし、今後も「手作り」で勘を頼りに目くら撃ちしていても ラスボスの高笑いとともにすべてがくずれ落ちる気配がつきまとっています。
やはり 専門家の協力が欲しい。かといって「信用してください、治せます」はまだ違うでしょう?と言いたいです。ご本家が難しいと言っている。プロトコル自体が上陸したばかりで、理論と手法にはプロフェッショナルであっても実体験はゼロのはずです。
この危うい道を手を貸しながらいっしょに歩いてくれる、そんなDr.との出会いを求めてアタックを続けます。

理想の介護ルームの夢はあきらめることにしました。
10年どころでなく 元気で生きていてくれそうな主人と二人で暮らす生活費が必要ですから、予算がとれない。同じことなら、介護ルームが必要ない状態を維持するための予算としたいです。

これからReCODEに触れる方へ

ReCODEプロトコル しっかりと実行すれば必ず何らかの改善があります。しっかりです。
けれども 理解しないままに行動するとかえって進行させてしまう危険もあります(Ⅲ型)。
コストと効果のバランスは自己責任でご判断ください。

知らずに歩いたとはいえ 本当に細い細い丸木の橋を渡ってきたのだと思います。
手作りベースで歩いてみようと思う方へは実際に行った情報をすべてお教えします。

あれほど待っていた訳本の登場ですが 今の状況はちょっぴり複雑な気分でもあります。



理解されることのない若年性アルツハイマー病との闘い / 講義より抜粋


若年性アルツハイマー病って どんな病気だかホントのところ知っていますか?
死にむかって時計の砂が滑り落ちていくように 生きるための機能を失っていく病気

恐ろしい病との闘い、思い込みとの闘い、偏見との闘い

いつまた 病が勢いを増してくるかもしれない恐怖




邦訳版「アルツハイマー病の真実と終焉」

下記リンク 興味をもっていただけましたら ぜひともご参加ください

練習風景 リハビリの様子 その他音楽活動アップしていますYOROZU×YOROZU

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